S1学年の皆さん、御卒業おめでとうございます。保護者の皆様、お子様の御卒業おめでとうございます。三年間、保護者の皆様に御理解・御協力頂いたことに深く感謝いたします。ありがとうございます。

 三年間で、夙川中学校は大きく変化しました。ポートアイランドにあった夙川学院中学校は、会下山に移転し、夙川中学校になりました。場所や名前の変更に伴って、学校自体も徐々に変わっていきました。人間は変化に対して、それを機会に飛躍する場合もありますが、変化したことに簡単になじめず不安になる場合の方が多いのではないでしょうか。中学1年生で変更を知らされた皆さんは、期待も勿論あったと思いますが、不安の方がずっと強かったはずです。保護者の皆様も本当に御心配だったでしょう。しかし、不安を胸に抱きながら登校していたはずの生徒の皆さんは、とても元気でした。毎日、溌溂と登校して来ました。教師たちの方が、その元気な様子にむしろ励まされました。場所は変わっても、登校するのは自分の行くべき場所。自分が一番自分でいられる、自分の居場所。ポートアイランドでも会下山でも同じ、クラスメートが待っているかけがいのない空間が夙川中学校なのだと感じました。学校に来ると元気になり、学校に来ない日はつまらない、そんな場所がS1クラスでした。

 ところが、2年生の終わりに大変なことが起きました。自宅待機が始まったのです。登校できない、クラスメートに会えないことがどんなに苦痛だったでしょうか。誰かといつも一緒にいて、仲間が大好きなS1クラスにとって登校できないことは想像以上に大事件だったはずです。ソーシャルディスタンスほど、S1クラスが苦手とするものはありません。

 しかし、会えない時間が逆に心の距離を縮めました。絆が出来たことを確信できたと思っています。中学時代と言うのは、成長するために、とても大切な時期だと思います。だから、心を通わせる友人と時間を共有して、悩んで、人を思いやる心を育てる機会が持てることは素晴らしいことだと思います。S1クラスでは、そのような場面をいくつも目撃しています。

 保護者の皆様、お子様の卒業式の晴れ姿を御覧になっていかがですか。随分背が伸びました。皆さんの制服が小さくなっています。みんな、私より小さかったのにいつの間にか背丈を追い抜いた人もいます。体も大きくなりましたが、心も大きく、より温かくなりましたよ。温かい心に何回も助けられました。

 先日、ウインターキャンプに行きました。最終日にランタンを上げましたが、その幻想的な光景はすばらしいものでした。体育館でそれぞれの夢をランタンに書いて、ゲレンデで中に火をともして一斉に打ち上げるんです。自分の夢を一生懸命書いていました。そして、ランタンを上げる瞬間に一人の生徒が言いました。「西田先生の事も書きました。」「え?」手を離した瞬間に真っ暗な空に白いランタンが上がりました。そして、くっきりと文字が見えました。「西田先生が長生きしますように」・・え?うちは100歳の家系だから、そんな願いいらないから。と思いましたがもうすでに空に舞い上がっていました。きっと願いは届くと思います。

 思い出すと思わず笑顔になってしまう出来事ばかりです。ありがとうございます。こんな素敵なお子様を三年間預けて下さった保護者の皆様に感謝いたします。保護者の皆様の愛情の深さを本当に感じます。S1生徒の皆さん、保護者の皆様、三年間ありがとうございます。

 最後に御卒業おめでとうございます。

2021年3月20日 S1学年 学年部長 西田 由紀