この冬の寒さは例年と比べて、一段と寒く感じられ、今年は春の訪れがやってくるのだろうかと思うくらい長く寒い冬の日が続いていました。 4,5日前から空気が緩み、校庭の紅梅と白梅が咲き始め、春が確実にやってきていることを知らせてくれました。

 夙川高等学校一期生の皆さん、記念すべき一期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんの門出を心よりお祝い申し上げます。保護者の皆様、ご子息ご息女のご卒業を心よりお祝いを申し上げます。そして、この場をお借りして、御礼を申し上げます。この間、本校教育へのご理解とご協力を賜り、感謝を申し上げます。皆様のご理解とご支援がなければ、夙川高等学校の教育は成立しませんでした。

 さて、卒業生の皆さん、いろいろなことがあった高校生活でした。特に、最後の二年間はコロナ禍にあり、制限のある中での高校生活でした。でも、皆さんは見事に高校生活を駆け抜けてこられました。皆さんが積み重ねてこられた努力と流した汗と涙の量に敬意を表します。
 そして、皆さんは今日、卒業とともに先生の指示から解放され、校則からも解放され、課題からも解放されて、自由を手に入れられます。これからは皆さんに『あれをしなさい』『これをしなさい』と口うるさく言う人はご両親を除いてもういません。これから皆さんは自分自身で自分のするべきことを考え、判断し、実行されることになります。いや、自分は何もやりたくないので、何も考えないという人がいるかもしれませんが、それは本人の選択ですから、尊重されるべきだと思います。何年か経ってから『ああ、あの時先生に口うるさく言われていたことはこれだったのか、あの先生にいやというほど叱られたのはこういうことだったのか』ということがひとつ一つ腑に落ちてこられることがあると思います。その時に夙川で学んだことが実になっているのだと、私たちはそれを想像して喜びたいと思います。

 この先の人生において、皆さんは様々な困難や問題に遭遇されることになります。先の見えない世の中です。コロナ禍がいつ終焉をむかえるのかすら私たちにはわかりません。10年先、20年先の社会がどうなっているのか。今までに出会ったことがない、経験したこともない、誰も想像したこともない問題が起こるかもしれません。まだ生まれていない職業が出てくるかもしれません。まだ発明されていない技術、まだ予測されていない社会の問題。それらのことについて、私たちは正解を知りません。学んできていません。でも私は悲観的な見方をしていません。皆さんはこの学校で今まで様々な取り組みを実践してこられたことと思います。その意思の力。みなさんが学びに向かう姿勢。行事に向かうみなさんの情熱・意欲。夙川高等学校の学びは決して受験の準備のための学びだけではなかったと思っています。皆さんが蓄えてきた全ての力を総動員して、これから遭遇されるかもしれない様々な変化と困難に果敢に挑んで頂きたいと思います。恐れることはありません。皆さんが実践してこられた学びこそが「Learning for tomorrow 明日につながる学び」だったと思っています。

最後に四つだけ申し上げたいことがあります。大切なこと。

大切なことは、知識の量だけではありません。考える力です。知らないことは調べればいいのです。

二つ目の大切なことは、人との連携です。私たちは一人では何もできません。

三つ目です。大切なことは、「それなりの素直さ」です。人間は完璧な存在ではありませんから間違いを起こします。そういう時に人からの忠告に耳を貸し、間違いを認め反省をし、改めるべきところは改める、改善する。それがそれなりの素直な心の持ち主だと思います。

そして、私が思う最も大切なことは「許し合う心」です。「他を受け入れる寛容さ」ではないかと思います。それらの力を皆さんは今までの学校生活で培ってこられたと思います。確信を持って申し上げます。みなさんどうぞ自信を持ってください。

ではみなさんの今後の活躍とご健闘をこの丘の上から応援して、私の皆さんに対しての言葉とします

ご卒業おめでとう。そして体に気をつけて。

2022年3月5日 理事長 西 泰子