この冬はとても長く、コロナ禍の厳しく寒い冬でしたが、ここに春がやってきました。会下山の桜は今日のこの日を待ちきれずに皆さんの入学を一足先に祝うかのように咲き誇っていました。

 須磨学園夙川中学校4期生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんが入学していらっしゃるこの日を、私たち教職員一同は心よりお待ちしていました。コロナ禍での受験の準備はさぞかし大変だったと思います。そしてとても厳しい入試でありました。その入試をくぐり向けて今日ここに皆さんをお迎えすることができて心から喜んでおります。
 保護者の皆様、ご子息ご息女のご入学のお祝いを申し上げます。これからの6年間、皆様のご協力とご理解ご支援なくしては本校の教育は成立致しません。どうぞ宜しくお願い致します。御来賓並びに育友会本部役員のみなさま、本日は御多忙の中、新入生たちの激励のために入学式にご参列下さいましたことをこの場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 さて新入生の皆さん、今日この中で、朝自分で起きて、自分で入学式の用意をして学校にいらっしゃった方、いらっしゃいますか。挙手は結構です。皆さん中学生になったのですから、一日の始まりは自分でスタートさせてください。須磨学園夙川中学校の中学生になるために、私が皆さんに求めることを申し上げます。一つ目は皆さんの「ジリツ」です「ジリツ」には二つの漢字があります。自分の足で立つ自立と、自らを律する自律です。これから始まる中学校生活で私がみなさんに求めるのは両方です。みなさん、身の回りのことを自分でしましょう。いままで皆さんが受験勉強で忙しい時、身の回りのことをほとんどお家の方にやってもらっていたと思います。家に帰ってテーブルの前に座るとごはんが出てくる。お風呂も沸いている。皆さんはテーブルに座るだけ。お風呂も入るだけ。お父さんやお母さんは洗濯もしてくださって、ベッドもきちんと整えて下さる。皆さんは勉強だけしていればいい時間を過ごしてきたのではありませんか。しかし中学生になった今日からは変わりましょう。少なくとも自分のことは自分でするように心掛けてください。この時期を逃すと大人になってから困ります。早々にオリエンテーション合宿があります。皆さん朝自分で起きなければなりません。その前に準備の荷物は自分で詰めましょう。自分のリュックの中に何が入っているか分からないままオリエンテーション合宿にいらっしゃると困りますよ。自分で自分の用意を作って朝自分で起きて集合場所に時間に遅れないでやってきてください。

 二つ目は当たり前の事は当たり前にするということです。須磨学園夙川中学校は決して自由を謳歌するだけの学校ではありません。どちらかというと厳しい学校です。制服もあります。制服の着方にも決まりもあります。制スマートフォンもあります。ルールを守って使うということ。これが求められています。小学校の時なかったような校則もあります。でも須磨学園夙川中学校の全ての校則、全てのルールは社会に出て当たり前の事柄ばかりです。挨拶をするとかルールを守るとか、人の話をきちんと聞くとか、そしてそれらは特別なことでもありません。しっかりと須磨学園夙川中学校の約束と校則とルールを守って中学校生活を送ってください。

 三つ目は自分の頭で考えるということです。みなさんはこの先、どういう自分になろうとしていますか。そしてその為に何をしなければなりませんか。皆さん今、何をするべきなんでしょうか。考えてください。極端な話をします。もしかすると、今日明日、いままでの経験したことがないくらいのメガトン級の地震が私たちを襲うかもしれません。学校にいるならまだいいです。家にいるときならいいです。もし皆さんが通学の途上、そして一人で歩いているところであればどうしますか。その場面に遭遇しないと何をしていいかわからない。まあ想像すらしておられないことかもしれません。経験してみないとわからないことは沢山あります。どうすればよいか、教えてもらっていないから分からないという人がほとんどでしょう。実は大人である私もどうすればよいかわかりません。一つだけ知っていることがあります。JRよりも北に逃げることです。津波を逃れるためにJRよりも山側に逃げるということを神戸市の行政の方から、防災担当の方から聞いたことがあります。私はそれしか知りません。皆さんどうしますか。ということで机に向かって学ぶ・得る知識だけではこの先不十分です。机に向かって学ぶことでは足りないのです。そのことを十分に理解してください。ですので私たちはこれからたくさん様々な形での学びを実践していかなければなりません。そのための第一歩としてまず自分でやりたいこと、決めてやってみる。自分で好きなこと見つけてやってみる。そのことをお勧めします。私は自分にとってその人にとって一番いい道、選択というのは自分で決めることだと思っています。自分の人生は自分で決めていきましょう。そのことが本校の教育の目的である自己実現です。

 この先、世の中がどうなっていくかということについては誰も分かりません。世界では争いがおこり、ウィルスが蔓延し猛威を振るっています。私たちは今のこの平穏な環境の中にいることを改めて感謝をしなければなりません。そして今、私たちにできること。それは精いっぱいに頑張ることだと思います。出し惜しみをしないでひたむきに努力を積み重ねることだと思います。ひたむきに努力を積みかねた人にもたらされる深い満足と喜びをみなさんにぜひとも経験して頂きたいと思います。私たちは全力でこれからの皆さんをサポートしていきます。

 ということで頑張って張り切ってスタートしましょう。どうぞよろしく。

2022年4月9日 理事長 西 泰子