この冬は数十年ぶりという寒波が到来し、皆さんが今まで経験なさったことのないような、厳しく、長く、寒い冬でした。久しぶりに神戸に雪も降り積もりました。春の訪れを遠くに感じていたのですが、先ほど校庭の白梅と紅梅が咲いているのを見て、知らないうちに春が来ているのだということを感じました。

 この良き日に、須磨学園夙川高等学校2期生の卒業式を挙行することが出来て、まず最初にみなさんに御礼を申し上げたいと思います。ご臨席を賜りましたご来賓のみなさま、本校生の門出の日を共にお祝いくださることに厚く御礼を申し上げます。保護者のみなさま、ご子息ご息女のご卒業を心よりお祝い申し上げます。そして長年に渡る本校へのご理解とご協力に心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。保護者のみなさまのお力がなければ、夙川の教育は成立いたしませんでした。

 さて、たった今卒業証書を授与された、夙川高等学校2期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。みなさんの門出を心よりお祝いします。3年前はコロナ渦でのオンラインの入学式でした。今日このような形で、みなさんの卒業を祝うことができて、本当に心から嬉しく思います。この3年間、みなさんは制限の中で生きてきました。だからこそ、色々な工夫をしておもしろい取り組みを試みてきました。東京研修でのタクシー、圧巻でした。テレビの取材も来てたようです。古都研修にも行きました。そして体育祭、文化祭、芸術鑑賞会もみんなで知恵を絞って実施しました。その時にできることを考えて、精一杯にやり、楽しむことができました。工夫・知恵をしぼったみなさんに敬意と称賛を送ります。素晴らしかったです。

 もう一つ忘れてはならないことがあります。コロナ禍での教訓の中に、人と人とのつながりがいかに大切なことであったかということです。バーチャルでのコミュニケーションや交流、マスクをつけたままの表情が見えない会話、リモートは確かに便利でしたが、学校という場において、その影響はいかばかりだろうかと、いま思います。私はいささか懐疑的ではあります。直接会って、対面で話をすることの重要性を改めて感じた3年間でした。普通のことが普通にできなかったときに初めて、普通であることのありがたさを認識したのだと思います。

 コロナ禍において私たちが経験したことは、予測不能な未知の世界でした。これまで私たちは正解のある問に挑んできました。少なくとも大学入試はそうでした。でもこれからみなさんが遭遇することは正解のない問いに対して、どう対応していくかということになります。その時にどう対応するのか、私なりの答えを申し上げます。1つ目に大切なこと、自分の頭で考えてください。自分で考えること。これは人から教えてもらったことよりも、もしかしたら稚拙かもしれませんが、自分で考えて出した答えには意味があります。ほかならぬ、誰のせいにもできない、自分自身で考えた答えですから。自分にとってのベストに繋がっていきます。
 2つ目、挑戦することです。つまりやってみることです。口だけではなく実行してください。3つ目に大切なこと。挑戦したことは失敗すると思います。でも3つ目はあきらめないことです。みなさんは失敗やミスを恐れておられるとおもいます。人間は完璧ではありませんのでミスをします。失敗もします。大切なことは失敗から学ぶことだと私は考えています。なぜミスをしたのかと反省することです。そしてそこから学ぶことです。二度目の失敗をしないように。同じミスを繰り返さないように反省をするということです。そして失敗して、みなさんが迷惑をかけた人がいれば、謝ることです。誠心誠意謝ることだと思います。失敗を認めない、ミスを認めない、人のせいにする、実はそういう人は大人になっても山ほどいます。ミスや失敗を認めない人は自分はどこで間違ったのか、永遠に知ることはありません。なぜ自分はうまくいかなかったのか、それがわからないまま過ごしていくことになります。みなさんにはそういう大人にはなってもらいたくありません。失敗をしたら叱られると思う人はいませんか。社会に出ると責任を問われることがあるかもしれません。でもまだそれは少し先のことです。失敗をしたから叱られるのではないということを分かってください。失敗を認めないから、反省をしないから、迷惑をかけた人に謝らないから、叱られることはあるかと思います。そういう人は二度目三度目の失敗をすることになります。だからみなさんがもし失敗をしたときは、もしミスをされたときは、素直に失敗やミスを認めて、反省をして、謝るべき時は謝り、感謝すべき人には感謝をして、次に向けた準備をすることが大切だと思います。失敗をするのが嫌だということで、チャレンジすることを避けないでください。実際にやってみないと、わからないことはあります。誰もが成しえなかったことというのは、だれも挑戦してこなかったことなのかもしれません。そしてそれを最初に成し遂げることができたのは、誰も挑戦しなかったことに、初めて挑戦した人が成しえたことかもしれません。

 社会に出る前の失敗は若者の大きな特権です。皆さんがこれから自分でやりたいこと、このような自分になりたいこと、いろいろなことに果敢にチャレンジをしてもらいたいと思います。

 長くなりましたが、最後です。人生はよく旅に例えられます。旅の意味は目的地にあるのではなく、旅をすることそのものの中にあると考えます。ですから、みなさんが目指す自分になるための道のりのなかで、皆さんが努力を積み重ねていくことに、意味を見出していただくことを期待しています。時には、道草をしてもいいと思います。回り道をされてもいいと思います。そして何年かたったとき、みんなで集まって、ほら今、自分はこんなにおもしろいことをやっているんだと教えてください。

 それではみなさんがよい旅をされることを祈念して、これからの皆さんのご活躍とご健闘を祈っています。

 ではみなさん、お元気で。

2023年3月4日 理事長 西 泰子