長く厳しい寒さが続いたこの冬でしたけれども、今週に入ってから突然春の訪れが来たような、そういう印象を持っています。今日、会下山の桜は満開に咲いています。桜と一緒に入学していらっしゃった須磨学園夙川中学校第6期生、88名の皆さん、ご入学おめでとうございます。私たちは皆さんのご入学を歓迎いたします。 保護者の皆様、ご子息ご息女のご入学、心よりお祝いを申し上げます。これからの6年間、私たちは子供さんの指導に全力を尽くしてまいります。保護者の皆様のご理解、ご協力なくしては、須磨学園夙川中学校の教育は成立いたしません。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新入生の皆さん、ようこそ夙川に。この学校は「温かい」学校です。ちょっと夏は暑いんですけれども、「温かい」というのは人の気持ちが、心が「温かい」学校です。生徒同士仲がいい、先生と生徒の間はとても近い、ということですので、そのことをまず皆さんにお伝えしたいと思います。何か悩みがあれば、すぐに近くにいる先生に、担任でなくてもいいです、直接の教科担当者でなくてもいいです。「先生、困っているんだ」というメッセージを出してください。

 新入生の皆さんは、中学受験をするために一生懸命努力を積み重ねてこられました。そして努力の結果、夙川中学校に合格されて、よかったなと思っています。そして、これから始まる中学校生活に期待と不安で胸をいっぱいにして今日を迎えられたと思うんですけれども、その皆さんの抱いている不安は、この坂道をしんどいと思わなくなった頃に解消されていることと思います。大丈夫です。

 さて、これから先の6年についてですけれども、これから先の6年間は皆さんが次の段階の教育を受ける準備の期間だと私たちは位置付けています。そして同時に、大人になって社会の中でよりよく生きていくための準備の期間であると捉えています。
 中学では英語という教科が新しく入ってきます。英語は努力の積み重ねの教科です。最初に怠けると後々厳しいことが待っているかもしれませんので、出遅れないようにしてください。英語ができるようになるととても楽しいです。いろいろな国の文化に触れることができるし、いろいろな国の人たちと様々な価値観を持った人たちと触れ合うことができます。英語の授業は授業時間だけでは足りません。予習の時間、復習の時間、アウトプットの時間、それは授業時間以外に学んでいただくことが重要になってきます。気をつけてください。算数は数学と名前が変わります。知識がなくてもひらめきで問題が解けていたようなことはもうないかもしれません。知識、基礎力の土台の上に数学の力というのは作られていきます。しっかりと予習と復習を当たり前のこととしてやってください。

 と、勉強のことばかり言いましたけれども、勉強以外のことでも皆さんにぜひ伝えておきたいことがあります。それは何かと言いますと、多分皆さんのほとんどが、人から今まで与えてもらうことが多かった人たちだと思います。大事に大事にご両親から育てられた人たちだと思っています。お母さんが朝起こしてくださるのは当たり前。いろんな当たり前に慣れていませんか?テーブルに座れば、温かい食事が運ばれてくる。これも当たり前。いつもきれいに洗濯された服がたたんで置いてある。当たり前のこととして、それらを受け止めていたかもしれません。自分は勉強さえしていれば、いろいろなことをやらなくても許されてきたのではありませんか。

 受験の時期はそれでよかったと思います。それが許されていました。でも、今日から皆さんは中学生です。中学生になったこの日を機会に、今日から少なくとも自分のことは、自分の身の回りのことは自分でやるようにしてください。少しずつでいいです。朝は自分で起きる。言われなくても学校に行く準備をする。大事なことです。自分の身の回りのことを自分でできるようになったら、それから今度は自分以外の人のこと、自分以外の人のために何かできることをやりましょう。

 皆さんが須磨学園夙川中学校高等学校で過ごす6年間は、とても長い時間です。この6年間の間に皆さんは決意さえすればいろいろなことができます。いろいろなものに、何者にでもなることができます。皆さん、これから自分はどういう人間になりたいのか、どういう人になりたいのか、強く決意をしてください。なぜ決意、決意と言うかというと、決意をしない限りは覚悟が決まらないのです。決意をしなければ、何となく過ごしてしまうことが多くなるからです。自分は頑張ると自分の目標のために頑張るという決意、12歳の決意、しっかりと今、行ってみてください。自分はこういう自分になりたいから、努力を積み重ねていくということです。努力の積み重ねを侮ってはいけません。少なくとも大学の入学試験、次の段階の教育を受けるための試験は、努力なくしては合格を手に入れることはできません。ですから、いろいろなところに行って、いろいろなものを見て、いろいろな人に会って、いろいろな話を聞いて、考えて、自分の世界をどんどん、広く拡げていってください。6年後にどんな道に進むこともできる。その力を蓄えていってください。

 私たちの使命は、皆さんを優しく育み、導き、育てるだけではなく、時には叱咤激励をしながら背中を押していくこともあるかもしれません。環境を整えて、困難も喜びも共にして進んでいくことです。ひたむきな努力を積み重ねてきた人にもたらされる深い満足と大きな喜びを、6年後の皆さんにぜひとも味わってもらいたいと思っています。

 保護者の皆様、大切なご子息ご息女を私どもに託していただいたことに大きな責任と緊張を感じております。私たちはご子息ご息女を全力でお育てして、情熱を持って指導にあたらせていただくことを、ここに学園を代表してお約束申し上げます。

 それでは、須磨学園夙川中学校6期生の皆さん、元気で出発しましょう。これからの皆さんの健闘と活躍を願っています。

2024年4月6日 理事長 西 泰子