須磨学園夙川中学校3期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。といっても、あまり実感はないと思います。中高一貫校ですので、ほとんどの皆さんはそのまま、夙川高等学校に進学します。今日はなぜ、この式を行っているのかということについてお話しします。

 今日、この式は区切りの時です。皆さんにとって区切りとなります。義務教育が終わった、1つ目の区切りです。そして2つ目の区切りは、子供から大人になっていただく日だと思います。といいましても、突然大人にはなれません。そして、子供と大人、何がどう違うのかということについて、皆さんはご存知ないかもしれませんので、私の考えを述べさせていただきます。

 子供は自分の欲望が我慢できない。自分の思い通りにならないと怒る。皆さん、学校では少し大人の顔をしているかもしれませんが、家に帰ったらいかがですか。思い通りにならなかったら、癇癪を起こして、お父さんやお母さんに文句を言っていませんか。子供は自分の思い通りにならないと駄々をこねます。できれば4月になれば、我慢をして、一歩一拍待ってから、「我慢しろ、大人にならなきゃ。」と考えてください。なぜこんなことを言っているかというと、「自分で大人になろう」と思わないと、大人にはなかなかなれません。

 周りを見てください。皆さんの周りにも、もしかしたら子供のまま大人になった人がいるかもしれません。子供のまま大人になった人でも、たまに許される人がいます。どういう人が、許されるのかよくよく考えてみてください。何かにとても秀でた人、その秀でた部分が大きい人は許されることが多いです。でも、子供のままよりも、大人になる方がいいですよね。子供のまま大人になるとそれは良くない。ではどうすればいいのか。私たち大人も子供も、人間はみんな間違いをします。色んなことを間違えます。失敗もします。たくさんの失敗をします。その時どうしたらいいか。それは反省をすることです。振り返ってみて、自分のここはまずかったと反省をしてください。子供はあまり反省をしません。心の赴くまま生きていますので、あまり反省をすることはない。でも、子供から大人になる。私もそうです。まだまだ未熟な人間です。反省をして何が悪かったかということをきちんと捉えてください。そして、2度目の失敗、2度目の間違いをしないように気をつける。

 私は1度目の失敗はいいと思っています。分からないですから。でも、2度目の失敗はやめた方がいいです。反省をしないと、なぜ間違えたのか、何がいけなかったのか分かりません。失敗を繰り返します。ですので、学んでください。反省のないところに改善はありません。私たちは少しずつ改善をしていって、少しずつ進歩していって、大人になっていくのだと思います。

 なぜ、こんなことを言っているのかというと、高校生になって、勉強して、賢い大学に行く人もいるかもしれません。みんなそうだと思います。しかし、よく考えてみてください。勉強ができるだけで、社会でうまくやっていけると思いますか。勉強できる人は世の中に山ほどいます。いい大学を出た人は山ほどいますけれども、その人たちがいかに愚かなことを社会で繰り広げているか、皆さんよくご存知ですね。テレビをつけると国会の中継があったりします。偉いと言われている議員の人も、官僚の人もいっぱい出てきますが、よろしくないことをして、なぜこんなに愚かなことをするのだろうと思うことはありませんか。たくさんの人が間違いを起こしています。勉強ができるだけではだめなのです。

 では、何が必要か。これからの皆さんにとって何が必要か、1つは学力です。これが必要なのは当たり前です。学力プラス何が必要か、それは皆さんの人となりです。人間性です。この人間性、子供だった自分から大人になるために、これからのあと数週間の中学校生活と高校生活の3年間で身につけてください。皆さん、18歳になると参政権が与えられます。大人になりますよ。大人になった時に、どういられるか、どういう素晴らしい大人になるのか、このことをこの3年間かけて努力していってください。学習面だけではありません。これは何度も何度も皆さんに申し上げないといけないと思っています。学習ができる、勉強ができる、いい成績が取れる、いい大学に行くことだけでは、世の中で生きていくことは、素晴らしい生き方をすることはできません。自分のやりたいことをやって、いい気になっていると、みんなから叩かれて、みんなの迷惑になって、もしかしたら害悪をなすかもしれません。

 しかし、勉強ができなくても、素晴らしい人は山ほどいます。なぜなのだろうと考えてください。これから大人になるために、もっと具体的に自分の中で見つけてほしいのです。人に喜んでもらえることをする、人の役に立つことをしてみる、困っている人を助ける。自分自身がまずいことをした時、反省をする、改善をする。みんなにとって良いことを進んでやる、何でもいいです。皆さんが自分だけのために生きているのではない、人から「ありがとう」と言われることがどれだけ素晴らしいことなのか。これから「ありがとう」と言われた回数を皆さん貯めていってください。自分自身の満足につながっていくことかと思います。

 夙川中学校3期生の皆さんは、私が今まで会った中学生の中で最も輝いた人たちだったと思います。皆さんは前向きで明るくて素直で何事にも一生懸命取り組んでいらっしゃいました。私はこの場で、この話ができ、皆さんを迎えることができて、そして高校に送り出すことができて非常に光栄に思っています。これからもまだまだまだ皆さんの成長を見ることができることに大きな喜びを感じています。どうか大きく心も体も大きく育っていてくださることを心より願っています。今日は本当におめでとうございます。

 そして、保護者の皆様、立派な子どもさんたちを育てられたことに敬意を表します。そして、夙川中学校もいろんな失敗や間違いがありましたが、保護者の皆様のご理解とご支援とご協力があって、この日を迎えることができました。心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 では、引き続き、どうぞよろしく。

2024年3月15日 中学校校長 西 泰子