103周年にあたっての話をしたいと思います。

 まず、最初に諸君らに質問をしたい。須磨学園は厳しい学校だと思いますか。そうだと思う人は手を挙げてもらえますか。 では、なぜ須磨学園は厳しいのか、そこに関して今日は話をさせてもらいます。

 日本でも指折り数えるほどの有名な偉い方がいらした。もう百年以上前にお生まれになった方ですが、その人の子どもが4人いたんです。長男、次男、三男、それから長女の4人。この立派な仕事をした人の4人の子どもはどうなったか。立派に育ったのは一人だけ、次男です。長男は「長男だ、長男だ」とかわいがられて、結局欲張りな、意地悪な人に育ちました。次男はどうだったか。長男が褒められて、ちやほやされて育っている横で「お前は勝手にやれ」と放任で育った結果、この次男は大変偉くなりました。会社の社長になって、また世の中のための公益活動にも力を尽くした立派な方に育ちました。三男はどうだったか。三男は甘やかされ、「何か欲しい」と言えば何でも買ってもらえて、良い人には育たなかったみたいです。最後の長女はどうだったか。家族全員がかわいがって、鼻持ちならない人になってしまいました。私はその話を聞いたときに、これは絶対に須磨学園の諸君らに話をしなくてはいけないと思いました。

 私が子どもの時に、あまり自分の父親が厳しすぎるから、母親や先々代の理事長に「お父さんが厳しすぎる。ひどい」と言ったことがある。そうしたら、みんなが父親に「和彦にもう少し優しくしたらどうだ」と言った。その時に父親は何と言ったか。今でも忘れることができない発言をしました。「みんながこの子を甘やかして育てるから、一人ぐらい家族の中に厳しいことを言う者がいてもいいだろう。そうでなければこの子はとんでもない子になるだろう」と。

 「学校に行きたくなければ来なくていいよ。勉強をしたくなければ勉強しなくていいよ」という学校もあります。しかし、私たちは、君たちがこれからの人生を生きていく中で、「須磨学園は厳しかった。でも厳しいあの学校だったから、今の自分がある」と思ってくれるような厳しさで止めておきます。だから、卒業するまでのもうちょっとの時間。この厳しさに付き合ってください。

 話は以上です。諸君らの健闘を祈ります。

2025年12月1日 学園長 西 和彦