本日、ここに卒業される皆さん、須磨学園夙川高等学校卒業おめでとうございます。教職員一同、皆さんのご卒業を心より祝福いたします。保護者の皆様、ご子息・ご息女のご卒業、心よりお祝い申し上げます。本日を迎えるまでのご苦労に敬意を表し、本校教育に対する深いご理解と多大なるご支援・ご協力に感謝申し上げます。
さて、卒業生の皆さん。皆さんは入学以来、本校のスローガン「Learning for tomorrow」のもと、多くのことを学び、経験してきました。うまくいったこともあれば思うようにいかなかったこともあったでしょう。しかし、その一つひとつの出来事が、今日、この場所に立つ皆さんを形作ってきたのです。
皆さんが高校生活を過ごしたこの数年、社会は激しい変化の渦中にありました。AIやデジタル技術は驚異的なスピードで進化し私たちの生活に深く入り込んでいます。一方で私たちは自然の脅威にも直面しました。今冬の記録的な大雪や連日のように報じられた熊の被害などは、技術がいかに進歩しても私たちは常に自然の一部であり、予測不可能な事態と隣り合わせであることを教えてくれました。
また、先日閉幕した冬季オリンピックでは限界に挑むアスリートたちの姿に心打たれました。彼らが私たちを感動させるのは単に結果を出したからではありません。そこに至るまでの数えきれない試行錯誤、そして支えてくれたコーチや仲間、ライバルたちと「共に積み上げてきた時間」を感じることができるからです。
これから新しい道を歩み始める皆さんに伝えたいことが一つあります。それは「人との関わりを大切にすること」です。
今の時代、AIに問いかければ瞬時にそれらしい答えが提示されます。しかし、その答えを鵜呑みにせず、「立ち止まって、自分の頭で吟味すること」。そして、自ら問いを持ち、学び続けること。これらはすべて自分を成長させるために不可欠なことです。けれども、どれだけ知識を身につけ、技術が進化しても、最後の最後で皆さんを支え突き動かすのは「人と直接向き合い、心を交わすこと」です。大雪で立ち往生したときに差し伸べられる手、熊の被害に怯える地域を救う知恵、そしてオリンピックの舞台で互いの健闘を称え合う姿。これらすべてはデジタルな画面越しでは決して得られない人間としての本質的な営みです。
人と直接向き合うことは時に煩わしく時間がかかることかもしれません。思い通りにいかず傷つくこともあるでしょう。しかし、自分自身が失敗から学ぶように他人の失敗に対してもどうか寛容であってください。誰もが試行錯誤しながら懸命に生きています。他者の痛みや失敗を否定するのではなく、それを受け入れ支え合える心のゆとりを持ってほしいのです。そのような寛容さこそが、多様な価値観を持つ人々と関わり続けるための本当の「強さ」であり社会をより温かい場所にする力となります。
明日からは新たな生活が始まります。皆さんの目の前にはまだ白紙の未来が広がっています。どうか学び続ける姿勢を忘れず、常識を疑う勇気を持ち、何より隣にいる人を、出会う人々を大切にしてください。皆さんが描く未来の絵が温かな人の輪に彩られた実り豊かなものになることを私は確信しています。
最後になりますが、私は皆さんの卒業アルバムの寄せ書きを依頼されたときはいつも一つの願いを記しています。それは皆さんが自分自身の人生を大切に歩み、そして周りにいる誰かの心を少しでも温かくできる人であってほしい、ということです。
皆さんの歩むこれからの道が、多くの笑顔に彩られた実り豊かなものとなることを心より祈念して私からのお祝いの言葉といたします。
2026年3月1日 高校校長 土屋 博文